高脂血症(脂質異常症)とは
高脂血症とは、血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)と中性脂肪(トリグリセライド)のうち、少なくともどちらか1つ以上が多すぎる状態を指します。
糖尿病や高血圧症と同様に症状に乏しく、健康診断などで発見されるケースがほとんどです。
コレステロールが高いとどうなる?
コレステロールは、体の組織、ホルモンをつくる原料として、なくてはならないものです。しかし、多すぎると身体の健康に悪影響を及ぼします。
血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)の値が高いと、そのコレステロールが血管の壁に蓄積して、血管が硬くもろくなる動脈硬化を進行させます。
そして、血流の低下や血栓を引き起こし、心筋梗塞や脳卒中など、命に関わる疾患のリスクが高くなってしまいます。
高脂血症と脂質異常症の違い
高脂血症と脂質異常症は、度々同じ意味の言葉として使われます。ただ実際には、脂質異常症というくくりの中に、高脂血症があるという関係を持ち、意味が異なります。
まず「脂質異常症」は、①LDLコレステロール:140mg/dL以上、②中性脂肪:150mg/dL以上、③HDLコレステロール:40mg/dL未満のいずれかに該当する状態を指します。
そして「高脂血症」とは、このうちの①と②の少なくとも1つ以上に該当する状態を指します。
ちなみに似た言葉として、「高コレステロール血症」があり、こちらは①に該当する状態を指します。
実は脂質異常症というのは新しい名称であり、2007年より、高脂血症と高コレステロール血症を含む生活習慣病の名称として、使用されるようになっています。
高脂血症(脂質異常症)に
症状はある?
高脂血症になったからといって、痛みやその他不快感を伴う症状はありません。
健康診断などで血液検査を受けない限り、なかなか気づけない病気です。早期発見・早期治療のためには、定期的な健康診断が非常に大切になります。
高脂血症(脂質異常症)になる原因と3つのタイプ
原因
高カロリー・高脂肪の食事、運動不足といった生活習慣の乱れ、肥満を主な原因とします。
また、ごく稀に遺伝的に脂質に異常が見られ、幼少期に発症するケースもあります。
種類
高LDLコレステロール血症
血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が140mg/dL以上になっているタイプです。
低HDLコレステロール血症
血液中のHDLコレステロール(善玉コレステロール)が40mg/dL未満になっているタイプです。
※高脂血症として考える場合には分類されないタイプです。
高トリグリセライド血症
血液中の中性脂肪(トリグリセライド)が150mg/dL以上になっているタイプです。
高脂血症(脂質異常症)が
引き起こす病気
動脈硬化が進行することで、血流の低下や血栓のリスクが高まり、狭心症・心筋梗塞、脳卒中、大動脈瘤などの病気を引き起こすことがあります。
実際にあったケース
高脂血症(脂質異常症)はほとんど無症状のまま進行するため、なかなかその恐ろしさが分かりません。実際にあったケースをご紹介します。
58歳のCさんは、デスクワーク中に突然胸の痛みを訴えて倒れ込み、そのまま救急搬送されました。検査の結果、心臓に栄養を届ける血管3本のうち、2本が詰まりかけていることが分かりました。この状態は心筋梗塞という病気に該当します。
すぐにステントで血管を広げる治療が行われ、なんとか一命を取り留めました。LDLコレステロールの値は、156mg/dlでした。高脂血症と診断される基準は140mg/dl以上ということもあり、健康診断で指摘されていたにも関わらず「そこまで危険ではないだろう」と放置していたのです。
頚動脈エコーで血管の状態を調べたところ、20%の狭窄が見つかりました。
心筋梗塞や脳卒中のリスクが高くなるとは言え、ほとんどのケースではそれまでは元気に暮らしているため、万が一、命を落とした場合にも、まわりの人は「あんなに元気だったのに。そういうこともあるんだね」と考えてしまいがちです。
1年に1回は必ず健康診断を受け、異常を指摘されたときには、要再検査や要精密検査、要治療といった指示に従うようにしてください。
高脂血症(脂質異常症)の検査・診断
空腹時に血液検査を行い、以下の項目を検査し、診断します。
その他、精密検査として、アキレス腱肥厚をレントゲン検査で調べることもあります。
LDLコレステロール | 140mg/dL以上 | 高LDLコレステロール血症 |
---|---|---|
120~139mg/dL | 境界域LDLコレステロール血症 | |
HDLコレステロール | 40mg/dL未満 | 低LDLコレステロール血症 |
トリグリセリド(中性脂肪) | 150mg/dL以上 | 高トリグリセライド血症 |
高脂血症(脂質異常症)の治療方法
治療の基本となるのが、生活習慣の改善(食事療法・運動療法)です。
年齢、性別、既往歴、危険因子などによって、患者さんごとに目標値が異なります。一人ひとりに合った治療計画を立て、サポートいたします。
食事療法
高カロリー・高脂肪の食事、食べ過ぎは控えてください。
具体的には、以下のような点に気をつけましょう。
- 動物性脂肪を摂り過ぎず、魚・植物性脂肪の割合を多めにする。
- アルコールの1日の摂取量の目安を守る(ビール中瓶1本/日本酒180ml/焼酎100ml/ワイン200ml ※女性はこの半分)
- 食物繊維をしっかり摂り、コレステロールの吸収を抑える。
- スナック菓子、清涼飲料水を控える。
- トランス型不飽和脂肪酸を含むマーガリンやショートニングを避ける。
運動療法
コレステロールや中性脂肪の値を下げるためには、ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動が有効です。1日30分~1時間くらいが目安です。
楽しくない運動、辛い運動は、なかなか続けられません。ご自身に合った種目を見つけ、コツコツと取り組んでいきましょう。またケガや心臓への過度な負担を避けるため、運動の強度も医師と相談して決めるようにしましょう。
薬物療法
食事療法・運動療法では十分な効果が得られない場合などには、並行して薬物療法を行います。
LDLコレステロールの値を下げる飲み薬、中性脂肪の値を下げる飲み薬などを使用します。