甲状腺とは
甲状腺とは、喉仏のすぐ下にある器官であり、正面から見ると、ちょうど蝶(チョウ)のような形をしています。縦2~3センチ、横4~5センチ、厚み約1センチの小さな器官ですが、甲状腺ホルモンを産生・分泌する大切な役割を担っています。
甲状腺ホルモンは、全身の新陳代謝を調整するホルモンです。分泌量が多いと過剰な新陳代謝や興奮状態を、少ないと新陳代謝や気力の低下を招きます。
甲状腺疾患の3つのタイプ
甲状腺疾患は、大きく以下の3つのタイプに分類できます。
甲状腺機能の異常
甲状腺機能が異常に亢進(高まる)したり、低下したりするタイプです。
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)と甲状腺機能低下症(橋本病)がよく知られています。どちらも自己免疫疾患を原因として発症するものとして考えられています。
甲状腺の炎症
細菌感染によって炎症を起こす「急性化膿性甲状腺炎」、ウイルス感染が原因と指摘されている「亜急性甲状腺炎」などがあります。
また甲状腺機能の異常である甲状腺機能低下症(橋本病)も、甲状腺の炎症を伴います。
甲状腺腫瘍
80~90%の甲状腺腫瘍は良性であり、特に治療は必要ありません。腫瘍が大きくなると、首の腫れ、しこり、飲み込むときの違和感などの症状が現れます。
こんな症状があれば
甲状腺疾患による症状かも…
甲状腺ホルモンが多い時に
あらわれる症状
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)では、主に以下のような症状が見られます。
- 頻脈
- 食欲亢進、体重減少
- 多汗、暑がり
- 疲労感
- 動悸、息切れ
- イライラ
- 手指のふるえ
- 筋力低下
- 軟便、下痢
- 甲状腺の腫れ
- 眼球突出
甲状腺ホルモンが少ない時に
あらわれる症状
甲状腺機能低下症(橋本病)では、主に以下のような症状が見られます。
- 徐脈
- 食欲不振、体重増加
- 皮膚の乾燥、寒がり
- むくみ
- 眠気、記憶力低下
- 筋力低下
- 動作緩慢
- 便秘
- 甲状腺の腫れ
- まぶたの腫れ
- 無排卵、無月経
甲状腺疾患の検査方法
血液検査によるホルモン濃度・自己抗体の測定、エコー検査などを行います。
また悪性の甲状腺腫瘍が疑われる場合には、エコー検査を行いながら採取した細胞を、病理検査にかけます。
甲状腺疾患の治療方法
薬物療法
甲状腺機能亢進症の場合には甲状腺機能を抑制する薬の投与を、甲状腺機能低下症の場合には甲状腺ホルモンを補充する薬物療法を行います。また定期的に血液検査を行い、適切に投薬します。
急性化膿性甲状腺炎には抗生物質を、亜急性甲状腺炎には痛み止めを使用するのが治療の基本です。
アイソトープ治療
甲状腺機能亢進症に対する薬物療法で十分な効果が得られない場合には、ヨウ素を取り込むという甲状腺組織の性質を利用してヨウ素(131Iカプセル)を内服する「アイソトープ治療」が行われることもあります。
手術
悪性の甲状腺腫瘍の場合には、部分切除または全摘出のための手術が必要になります。
また薬物療法で十分な効果が得られない甲状腺機能亢進症に対して、甲状腺を摘出する手術が行われることもあります。ただし、手術後は甲状腺ホルモンの産生と分泌が停止するため、生涯にわたる甲状腺ホルモンの補充が必要になります。